川又千秋『夢の言葉・言葉の夢』入手困難


1973年7月から翌74年12月までSFマガジンに連載された文章をまとめたもの。「僕にとって苦闘の記録」と前書きにあるように、序盤、中盤、終盤で、文章と内容がぜんぜん変わる。試行錯誤の過程が見て取れます。序盤は気負いすぎ、終盤は飛躍しまくりでカオスみたいになるんですけど、中盤の文章「作用について――島尾敏雄」「鉄腕アトムの子ら――ボリス・ヴィアンその他の思い出話」「王国――ルイス・キャロル」あたりがちょうどよく、心地よいです。この当時の川又千秋が、純文学、幻想文学、SFは読むけれど、ミステリについてはぜんぜん読んだことない人間だった(ミステリの初読がチャンドラー『さらば愛しき女よ』)ことが終盤に判明して、腑に落ちる部分あり。なるほど。