吾妻ひでお『失踪日記』

mhk2005-03-22

ISBN:4872575334
一時期どこにもなかったが、重版かかったのか、やっと買えた。かけなくなって失踪→自殺未遂からホームレス生活に至った作者の日々が描かれる。アル中篇よりはやはりホームレス生活を経て東京ガス孫受け会社に拾われるあたりのくだりが面白い。悪というよりは邪悪な人間性を有する同僚の柳井になぜそこまで付き合うことができたのか? と、ささいなことから彼への不満が噴出してから先の身の振り方に途方もないリアルを感じる。吾妻ひでおはある種の諦念とともに、柳井という存在を自らの行いに対する罰の象徴として受け入れていたのではあるまいか。理不尽な目に遭いながらの労働(苦役)に自分は従事すべきだと考えていたのだと思う。(だから、仕事以外についてはきちんと文句をたれている)社長に不平をもらした自分に気づいた吾妻は、己を恥じて、その場から逃げるほかなかった。