ヘリオテロリズム vol.01

『ヘリオテロリズム』vol.01表紙

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そらけいさんid:helioterrorism 編集の創作小説同人誌。自分も短編で参加させていただきました。
ちょっと辛口のコメントを。

  • 価格:ああ、高くなってしまった、というのが、800円という価格を最初に聞いた印象。無論、そらけいさんが暴利をむさぼってるわけではなく、170ページ近いボリュームの同人誌で、採算の取れるラインがこの値段になってしまうわけですが、やっぱり高い。どこの馬の骨が書いてるかもしれない、ぱっと見で判断の難しい小説誌に1000円近く出すのは勇気が要るような気がします。即売会売りで、当然購入者がこれ1冊だけ買うわけではない、十何冊買うのも珍しくないのを考慮すると、500円くらいの価格設定が可能な規模の本作りを目指すべきだったと思われます。これでは、ネットで見た人は買っても、それ以外の人には広がりにくそう。
  • 表紙イラスト:内容が予想できません。カバーサービスは名案ですが、カバーをかけなくても問題ない装丁にもすべき。個人的にはピンク色の配色は気恥ずかしいです……。
  • 内容:もし次号があるのなら、共通のテーマを決めるなり、もうちょっとコンセプチュアルな作りにしてみてもいいかもしれません。そういうのこそが編集の醍醐味という気も。執筆者同士がそんなに親しくないせいか、内輪ネタが出ないところはよかった。それもたいへん気恥ずかしいので……。

以下、各作品に対するコメント。

  • 「ドラウナーズ」いづる@id:iduru

バイト先と部屋を往復するだけの半引きこもり生活を続ける女性の自傷日記。やかましい隣室に文句言いに行くのは相当に勇気が要るような、そんな気が。文章は端正で、引っかかりなく読めましたが。もう少し踏み込んで痛々しい表現を使ったほうが、内容と長さに合っていたと思います。

まさにヒット・パレード98-89な内容。16歳未満グラビアモデルのウェストライン想像していちいち勃起してるとちんこが大忙し。世代の共通認識に依存する作品構築は諸刃の剣なので勇気が要ります。固有名詞連発の影で密やかに進行するもうひとつの流れの操り方がもう少し巧みだったらよかった。ちょっと唐突ですね。

  • 「メタ探偵の憂鬱」秋山真琴@id:sinden

麻耶雄嵩佐藤友哉の間をサンプリング、というか。4行目の「虚空を貫き続ける光がある。」でまず衝撃を受けたんですが、文意を取りにくい表現が多すぎて、年寄りにはちょっと辛い。何が起こってるのは読んでいて理解できないのです。

タイトルどおりのお話。かなり達者な出来で、さまざまな点で抑制を効かせているあたりに感心しました。自分ならばもうちょっと派手なことをしてしまいそうです。

まず、タイトルを「電車男」にすべき!(嘘) 言葉の選び方、文章の編み方は手馴れていて、安心して読み進められます。ただ、全般的に淡々としすぎているきらいはあって、要所要所に埋め込むフレーズは心に残る、不気味な感触のものにしたほうが、さらに印象的になるはず。もっと狂気を!

  • 「百億の秋に、千億の愛を」丼原ザ★ボン@id:thebomb

解読が難しい。困った、困った。

すごく丁寧に書かれていて好印象。なのに放り出したかのように終えてしまうあたりは賛否分かれそう。個人的には嫌な展開を延々と書き綴るべきだと思います。しかし、麻耶雄嵩リスペクト! とは思わなかったな。

なかなか面白い。これもたいへん達者です。しかし、もっとべつの種類の発明品使った物語のほうがラストの一文は引き立ったような気がしないでもありません。

  • 「落し物を届けに行こう」鈴木知友@見下げはてな

公園までのシーンはいらないのでいきなり自販機のシーンからはじめるべき。あと、中盤から終盤にかけての展開が駆け足かつ無理筋。序盤書いてラスト書いて、あれ? トリックが思いつかないですよ……? といういい加減な創作姿勢に起因していることはまちがいない。難しいことを書こうとしないあたりは分相応で好感が持てるが、もっと落ち着いて書こう。最終締め切り5時間前で20枚残りとか、そういう事態には陥らないよう、日頃から心がける。