「やれもこう」

あたりを見るとやたらに大きい。いや、自分が小さいのかもしれなかった。体操競技に使うマットのやたらに広いものが敷いてあって、自分はその上で飛び跳ねている。動きがずいぶんぴょこぴょこしている。
カエルのようなものや、くろぐろとした形のよくわからないものが羽織袴姿でマットを取り囲んでいて、なにやら札のようなものをやり取りしている。身の丈はそれぞれ自分の10倍ほどもあって、自分が縮んでしまったのか、それら物の怪が大きいのか判然としない。やけに玩具のような動きをしていて、ならば自分が小さいのかもしれない、と思った。
羽織袴のカエルがその一つ目でこちらをにらむと、腹の底から響いてくるような声でこう囃し立てる。
「やあ、やれもこう」
くろぐろとした塊がこう受ける。
「やれもこう」
自分はぴょこぴょこ飛び跳ねる。
カエルはこちらをぎっと睨むとくろぐろとしたものと自分の目の前にあった札の山をこちらにぐっと押し出した。
どうやら自分が勝ったようだ。
ルールがよくわからない。