「ととと」

気をつけの姿勢のまま身動きが取れない。
地面と平行に並ぶ何本もの線が目の前にはあって、光を浴びて鈍色に輝く。
機械が起動するような振動音が鈍く響いて、ゆっくりこちらに近づいてくる。近づいてきた。後ろに抜けていった。
ピアノ線のようなものにゆで卵のようにスライスされてしまったらしいが、手足を動かすこともままならないので実感がない。
何者かに首筋のあたりをとんとんとん、と叩かれ、ぼくの身体は後ろに少しずつ傾いていく。
階段状のぼくの身体の上を、小さい何かがととと、と駆け下りていった。