「肉を買いに」

肉を買いに出た。肉屋の前だ。
普通のショーケースの中に、普通に見える肉が並んでいる。無難なところで牛肉の薄切りなどを買ってみた。
ロースとかサーロインとかヒレだとかはわからない。
「とりあえず、牛、500g」と言った。
自分はどうやら顔なじみらしい。店のおばさんはにこにこしていた。
「オマケしとくから、これ、ウチのひとにはないしょね」
肉1枚1枚のあいだに新聞紙の切れはしをはさみはじめた。