「オズの魔法使い」

絵本を読んであげている。
絵本の前には、だいたい五、六歳くらいの男の子と女の子がいて、誰かはぜんぜんわからない。
読んでいる絵本は「オズの魔法使い」だ。
ブリキの木こりやライオンやかかしたちを連れたドロシーはお花畑を抜けていく。
しかし、よくみるとそこはダイコン畑で、青青とした葉っぱが地平線の向こうまで連なっている。
ダイコンの葉と葉のあいだには、下半身を土に埋められた男たちが何人もいる。彼らの上半身は緑色の保護色に塗られていて、ぱっと目には気づかない。
嘲るような表情を顔に浮かべた男たちはドロシーたちを興味深げに眺めている。指差して笑っている者もいる。
けっきょく気づかないままに、通りすぎてしまった。