「となりの席の」

どこかから転校してきた。ここは小学校だ。
周囲の縮尺がどうにもあやふやで、となりに立っている担任の先生の身長が自分より高いのか低いのかわからない。
そういえば、自分が小学生なのか、それとも大人のままなのかもわからない。
空いている席につく。
お隣りさんにあいさつしようと横を見るとなんだかもやもやしたものがいて、それは重なり合っていく記号や文字の列なりを早回ししたもののようでもあり、渦の中でもつれあっている髪の毛の束のようでもあり、アラジンのランプから湧いた煙のようでもあった。
「こ、こんにちは」と、とりあえずあいさつすると、もやもやしたものの真ん中あたりがもごもごとうごめいて、やがて、「ぺっ!」と何かを吐き出した。
自分の座っていた椅子にはね返って転がったそれは、ひねって潰したマイルドセブンライトの空き箱だった。