「下駄箱湯」

てぬぐいと洗面器を抱えて近所の高校に向かう。
部活に入ってない生徒たちがちょうど帰宅する時間で、失敗したかな、と思うけれど、まあ、しかたがない。
下駄箱の横に手をかけて、一気にスライドさせる。そこには番台があって、400円払って中に入る。
脱衣場で服を脱いで、もう1回、今度は裏から下駄箱を横にずらして外に出る。
目の前の下駄箱が横に動いて、その奥から手ぬぐい一枚で前を隠しただけの男が急にあらわれたのでびっくりしたのだろう、女の子がきゃっと小さく声を上げた。
彼女はきっと新入生なのだろうな。
さて、今度は浴場の扉だ。まったく、なんでこんな作りにしたのだろう。
「寒くって、ごめんねえ」
番台のオバちゃんの声が後ろから聞こえる。
そういう問題でもないんだけどな。