「消去法」

四方が書架で埋め尽くされた部屋の中で調べ物をしている。
部屋の中央には下に降りるための階段がある。どうやら、ここは屋根裏を書庫として改造した部屋のようだ。
天窓からの明かりを頼りに辞典のページをたぐる。どうやら、自分は殺人事件の捜査をしているらしい。
辞典で調べれば犯人の名前がわかるのかどうかはわからない。
「ふむふむ、現場に残留していた指紋は全部で三種類、ひとつが被害者のもの、ひとつが第一発見者のもの、もうひとつが……」
誰かが階段を昇ってくる音。
「……犯人は、お前だ!」
右手に握りこんだシャープペンシルの芯を投げつける。
「いててて…… 勘弁してくださいよ」
担当の刑事だった。
「なんで私を犯人呼ばわりするんですか?」
シャープの芯を顔じゅうに突き立てて、ウニのような面構えになった刑事が尋ねる。あまり機嫌がよくないらしい。
「えーと、まあ、しいていえば、消去法で」