ウィル・セルフ(訳:安原和見)『元気なぼくらの元気なおもちゃ』
- 作者: ウィル・セルフ,安原和見
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2006/05/20
- メディア: 単行本
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引っ越した家の水道からジュースが出たよ! 不思議!! みたいな「リッツ・ホテルよりもでっかいクラック」は、たぶん読者が予想しない方向になんとなく着地して終わり。内面にいる「子供」が実体化どころか巨大化して「大人」と寄り添って暮らすという、奇想コレクションにふさわしい設定の「愛情と共感」は、最後のオチがこれか……。
このウィル・セルフという人、12歳で麻薬をはじめ、17、8歳には立派なジャンキーになってたらしいんですが、お父さん大学教授らしいし、本人もオックスフォードの哲学科卒業してたりして、賢いんですわ。そのクレバーさが作品に作用していて妙にもやもやする。物語としての面白さでいえば「リッツ・ホテルよりもでっかいクラック」の後日談にあたる刑務所ストーリー「ザ・ノンス・プライズ」ですが、クレバーないやらしさが出ている点で表題作「元気なぼくらの元気なおもちゃ」がウィル・セルフらしいのでは、と思うのでした。「リッツ・ホテルよりもでっかいクラック」→「ザ・ノンス・プライズ」における弟テンベの変わり身の早さってウィル・セリフ自身の投影なんじゃないかと勝手に想像しますが、ちがうかしらん。