ジョナサン・キャロル(訳:浅羽莢子)『パニックの手』
- 作者: ジョナサン・キャロル,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/05/27
- メディア: 文庫
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キャロルは短編もかっこいい。解説の津原泰水も書いてるように、やはりこの人だけは特別だ。誰もこうはなれない。書けない。こういうのを読みたければ、キャロルのを読むしかない。
長編『空に浮かぶ子供』ISBN:4488547044「フィドルヘッド氏」は、四十になったわたしが親友のレナにプレゼントされた出所不明のイヤリングに端を発する物語。最後の4行にぞくりとする。まあ、自分は、どれもいい、不完全なところを含めてどれもいい、などと書いてしまうキャロル・フリークなわけだけれども、「おやおや町」、「細部の悲しさ」、「秋物コレクション」を収録作のベストとして挙げてみよう。大学教授の家にやってきた人なつこい掃除婦が……という「おやおや町」は、びっくりするほどのキャロル節。人が思わず目を背けてしまう部分――人生がいかに残酷で不条理なものか――を否応なしに突きつけてくる。普通こんなこと考えないよ! という奇想と終盤のキャロル展開でこの本のベスト。それに続くのが、やがて死ぬことが決まった男の物語「秋物コレクション」。この並びはいいね! 「細部の悲しさ」も奇想系。しかし、キャロルはデス・メタルとかそういうの嫌いなのか。悪の象徴のようだ。これらのほか、世界幻想文学大賞受賞作「友の最良の人間」や表題作「パニックの手」(これもよくこんなこと思いつく)全11篇が並び、新装版『死者の書』ISBN:448854701X『パニックの手』(と『黒いカクテル』)あれば、キャロルのなんたるかがそれなりに把握できるはず。ぼくが手放しで賞賛・敬愛・羨望・尊敬できる数少ない作家のひとりとしてキャロルのこの『パニックの手』はオススメしたい。
ところで、「パニックの手」ラスト3行の意味がよくわからなくて、自分の読解力に不安がよぎる。えーと。
- WEB拍手コメント(感謝!)へのレス: いや、僕もそうだろうなとは思うんですけど、いささか唐突にすぎる気がして、なんかほかに解釈あるのかな、と。(具体的に書くとネタバレになってしまうのでご容赦ください)