オコナー(訳:須山静夫)『オコナー短編集』

mhk2006-03-26

オコナー短編集 (新潮文庫 オ 7-1)

オコナー短編集 (新潮文庫 オ 7-1)

フラナリー・オコナーの代表的な短編から、「川」、「火のなかの輪」、「黒んぼの人形」、「善良な田舎者」、「高く昇って一点に」、「啓示」、「パーカーの背中」7編を収録。パトリシア・ハイスミスもフォークナーも好きな自分にとって、フラナリー・オコナーはやっぱり好きな作家です。
この作品集の中では「啓示」がすばらしい。敬虔なクリスチャンであるターピン婦人(ちょっぴり太りぎみ)が病院の待合室にいた醜い少女に「もといた地獄に帰りなさいよ、老いぼれのいぼいのしし」と囁かれ、その言葉に神の啓示をみてしまうお話なんですが、

深まってくる光のなかで、すべてのものが神秘的な色合いを帯びてきた。牧草地はガラスのような奇妙な緑色になり、一条の縞に似たハイウェイは薄紫になった。彼女は勇気を出して最後の攻撃の準備をし、今度はその声は牧草地全体に鳴り渡った。「いいわ」と彼女はわめいた。「わたしのことをいぼいのししと呼びなさい! もう一度、いぼいのししと言ってごらん。地獄から出てきたって。わたしのことを、地獄からきたいぼいのししだと言ってごらん。何もかも上下引っくりかえしにしてごらん。それでもちゃんと上と下があるんだよ!」

よくこんなふうに書けるよなあ。