オコナー(訳:須山静夫)『オコナー短編集』
- 作者: オコナー,須山静夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1974/03
- メディア: 文庫
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この作品集の中では「啓示」がすばらしい。敬虔なクリスチャンであるターピン婦人(ちょっぴり太りぎみ)が病院の待合室にいた醜い少女に「もといた地獄に帰りなさいよ、老いぼれのいぼいのしし」と囁かれ、その言葉に神の啓示をみてしまうお話なんですが、
深まってくる光のなかで、すべてのものが神秘的な色合いを帯びてきた。牧草地はガラスのような奇妙な緑色になり、一条の縞に似たハイウェイは薄紫になった。彼女は勇気を出して最後の攻撃の準備をし、今度はその声は牧草地全体に鳴り渡った。「いいわ」と彼女はわめいた。「わたしのことをいぼいのししと呼びなさい! もう一度、いぼいのししと言ってごらん。地獄から出てきたって。わたしのことを、地獄からきたいぼいのししだと言ってごらん。何もかも上下引っくりかえしにしてごらん。それでもちゃんと上と下があるんだよ!」
よくこんなふうに書けるよなあ。