回廊 vol.06(感想その2)
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秋山真琴さん(id:sinden)が編集長を務めるオンライン文芸誌。今号の特集は「実験小説」。各作品タイトルはHTML版にリンクしてあります。
読切短編小説
- 桂たたら「緑の抵抗値」
- 複数の出会いと会話があって、アクションがあって、最後にはサプライズも用意してあって、と盛り沢山。リーダビリティが高い文章といい、かなり好感が持てますが、中盤で盛り上がりがピークに達してしまう構成が効果的かどうかはよくわかりません。そんな話だっけ? と思ってしまうタイトルについても疑問。「関東圏でも大きな都市の部類に入る」街と「同じだけの広さがある森」の真ん中に見える白い家まで徒歩で行くのは無理があるような気も。不思議な森だからいいのかな。あと、読み逃しているだけかもしれませんが、パンツを見せてた女子中学生は結局だれだったの?
- 星見月夜「僕らの青年期 〜 声」
- 過去と現実の狭間で揺れ動く心。同窓会とかないんですかね。過去の追跡が不可能な理由付けをするか、遺されたアイテムの価値を高める何かを付加したほうが物語に説得力が生まれる気がします。「……」を多用しすぎかも。
- 六門イサイ「魔術師は悪夢の鍵を手に」
- オカルト+萌え+ほのぼのファミリー。なかなか面白いんですが、前半まるまる設定で、ほとんど何も起こらないのはさすがにバランス悪くないですか。世界設定を読者に伝えつつストーリーを進行させる術を身につけるとよさそうです。
コラム
- 「遥彼方「旧式ラジオ Vol.3」
- 「さあさあ今回もやってきました旧式ラジオ! 大阪の果ての果てから私、遥彼方が、何かいい音探してる、そこのあなたにお送りします」さすが旧式なノリだなあ。
- 秋田紀亜「電気羊の夢を見る者たち」
- 「ディックの手法の最大の特徴は(中略)そこらの感覚は文系的と言えます。」のあたりなど、なんか微妙。主張に最適化して書いてもいいと思う。手塚治虫のくだりも唐突。
- 踝祐吾「積読にいたる病 第参回」