ヘリオテロリズム vol.02

mhk2005-04-11

誌面デザインから編集までをそらけいさんが担当した創作系小説同人誌。vol.02の特集はミステリで、短編ミステリ×5+評論×1に加え、連載小説×4、非ミステリな短編×3の計13編が収録されて、全240ページの大ボリュームである。詳しい内容紹介は↓に。
http://d.hatena.ne.jp/helioterrorism/100504

vol.01と比較して

  • vol.01の感想:http://d.hatena.ne.jp/mhk/20041122
  • 内容はかなり充実してきている。表紙デザインも落ち着いて、電車の中で取り出して読んでもそれほど変じゃないのはうれしいところ。
  • 目次pdf)における各作品の原稿用紙換算枚数は改稿前のものでは? 上限50枚で揃えてあるはずなのに、ばらばらになっててもったいない。

評価について

  • 商業作品を読むときの基準で書く。(ので、必然的に厳しめの評価になるかもしれない)
  • 内容に若干踏み込むが、ネタバラシにならないように配慮はする。

特集:ミステリ

  • 「MESSAGE」三澤未来@Fortune
    • 未亡人と中学を卒業した娘が、十五年前に死別した夫の遺したオルゴールの謎を解く。
    • 全編通していいお話になってしまっているので、インパクトに欠ける。読者の感情誘導はもっと意図的に工夫すべきだろう。
    • 一種の暗号ミステリなのに、暗号が読者に提示されていない。ミステリではないような気もする。
    • ヒントが微妙に不吉なのは作者の意図したものなのだろうか?
  • アブラクサスの狭間」小田牧央@*the long fish*
    • 幻想写真家の狂気。ミステリ方面では法月綸太郎作品が頭に浮かぶかもしれないが、個人的にはグレッグ・イーガンの短編「愛撫」を想起した。
    • でもイーガンのほうがサービス精神にあふれていてわかりやすい。
    • 異形のビジョンを幻出させることで読者を震撼させるのが狙いだと思うんだけど、そもそも肝心のビジュアルが浮かばない。幻想文体になりえていないからか。
    • もっと単純化してみても問題ないように思ったりするけど……。
  • 「OUTSIDERS」キセン@ノイズ(アンプラグド)
    • 同日、命を絶った作家と評論家の謎。<99.Counter Stop>でみられる処理といい、読者を飽きさせない工夫が随所にみられてたいへんよいと思う。
    • 作家・評論家ともに身も蓋もない名前で書いちゃってもよかったのに……と他人事だからいえる。
    • ただし、事の真相については要工夫。
  • 「キャベたまたんてい はらぺこライオンじけん」近田鳶迩@id:enji
    • 「キャベたまたんてい」シリーズのパスティーシュMYSCON児童ミステリ企画ではじめて読んだけど)。
    • ならば「本誌の体裁を考慮して漢字表記を増や」さないほうがよいのでは。ふりがなもいる。ちょっと長い。
    • 狙いはわかりやすくてよいです。
  • 「愛なき世界」いづる@id:iduru
    • 津原泰水『ペニス』のような。
    • が、文章は普通だ。
    • きちんとコントロールしてこう書いたのか、こうしか書けないからこのトリックになったのかは知りたい。
    • ミステリとして成立してるかといえば、していない。サプライズが生まれる作りになっていないので。

連載小説

  • そもそも、同人誌に小説連載するのか、と思ったりもするけど……。
  • 発行人のそらけいさんが連載してるんだからいいのか。
  • 「宇宙探偵ザイザー7の事件簿 セピアブルー過去発掘場第三ゲート」松本楽志@天使の階段
    • 全何話なんだろう? いろいろちょうどいいから読めちゃうけど、事件くらい起こすべきなのではなかろうか。目次の内容紹介までも進んでないですよ……。
  • 「君は僕に語りかける」丼原ザ★ボン@id:thebomb
    • 『20』読んでない(そういや、買ってもいない)ので割愛。
    • 文章はなかなか面白い。
  • 「メタ探偵の溜息」秋山真琴@雲上回廊
    • 「暗闇塔。確かにそこは暗かった」という文章で爆笑。
    • ジョジョを読んでいないのに(→参照)こういうのが書けてしまうのか。
  • 『輪唱ラヴソング(二)』曽良圭@id:helioterrorism
    • 達者だと思うんだけど、小説として引っかかりに欠けるような気がしてならない。

短編小説

  • じつは特集:ミステリ掲載作との境界はかなり曖昧である。
  • 「春・土手」高橋百三@id:hyakuzou
    • いろいろちょうどよい。ただ、当然「こんにちは」については謎として回収されるものだとばっかり思っていた。
    • この主人公視点の場合、「妊娠」という単語は使わないんじゃないかなあ。
  • 「07082045 [性愛の発見]」素晴城路安@id:hey11pop
    • 「オナレイヤー2045」と読む。
    • これはおもしろい。オナレイヤーという発想がまず素晴らしい。ブラッシュアップすれば、『SFバカ本』あたりにぴったりの作品となるだろう。
    • 後半もっとエスカレートさせたほうが、ラストとのギャップが生きると思う。
  • 「みつけ鳥」鈴木知友
    • 少年たちのひと夏の冒険……か?
    • 2メートルは掘りすぎだった。
    • またも無理筋なお話だ。
    • 実験的にpdfファイルをアップしてみるけれど、はたして読む人いるのだろうか?
    • http://picnic.to/~mhk/mirror/mitukedori.pdf
    • この小説はある種のドッキリだったことをいま思い出した。すみません……。