ジョナサン・キャロル(訳:浅羽莢子)『天使の牙から』

『天使の牙から』

ISBN:4488016103
フィンキー・リンキー再登場! こんどは主役!!!
ジョナサン・キャロルの読み逃しを消化してみた。どちらも在庫切れのため図書館本。
みんなの人気者だったフィンキー・リンキーことワイアット・レナード。かつてのTVスターも今では末期ガンに侵されて余命幾ばくもない。夢に出てくる死神の言うことが理解できないと現実の肉体を傷つけられると書かれた奇妙な手紙を女友達から手渡されたワイアットは、手紙の送り主である彼女の兄を救いにウィーンへと旅立つ。そこでワイアットを待ち構えていたのはくだんの死神だった。
ワイアットと死神の問答に平行して、芸能界の頂点で引退、ウィーンで静かな日々を過ごしている世界的女優の情熱溢れるラブロマンスが語られる。相反するふたつの物語はやがて……というお話。
ああ、なるほど、というキャロルお得意のパターンながら、ぞくぞくするようないやな展開があってよろしい。平和なはずの日常がバリバリと音を立てて裂けていくさまを描かせたらやはりすごいものがあります。あれとあれの中間くらいの感触だね、と既刊タイトル挙げてしまえばわかりやすいんですが、それだとネタバレになっちゃうしなあ。キャロル作品のゲイは全員すばらしい人格。