桜庭一樹『GOSICK−ゴシック−』

桜庭一樹『GOSICK−ゴシック−』

ISBN:4829162295
郊外の屋敷に暮らす占い師の老婆が密室状態の中、射殺される。ド・ブロワ警部の情報だけを頼りにあっさりと事件を解決したヴィクトリカは亡き占い師ロクサーヌに宛てられた招待状を発見する。港に停泊中の豪華客船で催されるディナーには<メインディッシュは"野兎"です>とあった……。
パイプをくゆらし名探偵口調で話す正調ゴシックロリータ美少女・ヴィクトリカと、あわあわしがちな気弱美少年・一弥コンビがお送りするミステリ第1弾。10年前に沈んだはずの幽霊船<QueenBerry号>に人々を招いた犯人は誰か? そしてその理由は? というお話で、現在と過去が交錯しつつ、事件の真相が浮かび上がります。
招待客の中に身分を偽って潜む殺人鬼がいる! というサスペンスタッチで物語は進行していきますが、容疑者の数があまりにも絞られすぎで、意外な犯人という点では盛り上がらない。この長さ使えるならば登場人物をもう少し使えた気がします。個性豊かな10人を出してみせた『そして誰もいなくなった』だって、考えてみればそれほど長いお話ではないし、物語密度という点においては薄味かも。多人数を動かしてドラマを作るにはまだ筆力が足りてないのかもしれません。(これはライトノベルだからどうとか、ヴィクトリカと一弥のふたりが中心だから、という問題とはちょっと異なります)有名ミステリのトリックアレンジについては、まあ、普通。

桜庭一樹の本、書店数軒探してみたけれど、ぜんぜん売ってないぞ――。ファミ通文庫は新刊以外、あっというまに店頭から消えてしまうのか……。『推定少女』か『赤×ピンク』……。