田中哲弥『ミッションスクール』

ミッションスクール (ハヤカワ文庫JA)

ミッションスクール (ハヤカワ文庫JA)

田中哲弥7年ぶりの新刊は、ミッション系の学園を舞台に、なにやらとんでもないことがおこる、という連作短篇集。
シュールでとぼけたやりとりと予想するのが面倒くさくなる突拍子もない展開により、物語の意味はどんどん弾けていく。表題作「ミッションスクール」は、なぜか国際紛争が繰り広げられている学園を舞台に、国連諜報員の吹石雄作と彼のクラスメイトでありMI6の秘密諜報員でもある美少女・山岸香織のふたりがイラク軍のテロ活動を阻止するための極秘任務を開始する……というスパイ戦なわけであるが、これをスパイ戦と呼んだら怒る人間も多そうだ。「あたし生理はじまっちゃった!」バボーン! と発動する超能力ホラー「ポルターガイスト」、失われた備品の追加を求め、総務部を目指す美術部員たちの伝説「ステイショナリー・クエスト」、アメコミ風超人バトル「フォクシーガール」、沈んでいく学園を舞台に展開するシュールなシュールなパニック純愛ロマンス「スクーリング・インフェルノ」、どれもたいがいにしたほうがいいお話であり、読者は田中哲弥との真剣勝負を強いられる。「お前はどこまでついてこれるのか?」である。読む順番は関係ないので、「ミッションスクール」→「ステイショナリー・クエスト」→「フォクシーガール」→「ポルターガイスト」→「スクーリング・インフェルノ」の順で読むとなんとかなりやすい気もする。(なんとかってなんだろう?)
ポルターガイスト」は掲載誌電撃Hpの読者アンケートでダントツ一番嫌いな作品に選ばれ死ねとまで言われたと巻末あとがきには書いてあるけれど、さもありなんであろう。少年少女にこんなものを読ますな。書き下ろし最終話「スクーリング・インフェルノ」のねじれた悪夢展開はひどすぎるが、素晴らしい。