ヘリオテロリズム vol.03 読切作品感想


さあダメ出しの時間だよ! 心に棚を作って、容赦なくいく。
作品詳細については→ここらへん参照のこと。→通信販売

  • 「ピギィ・オルタナティヴ2047[次々と豚]」素晴城路安(id:hey11pop
    • 印象的なフレーズを作りだす才能は群を抜いている。前作の「メタオナニー」とか今回の「童貞を捨てると、そこは雪国だった。」とか。セルフライナーノーツだとこうだけど、じつは舞城作品より小林泰三の影響が見え隠れしているような気もする。到達点についてはむしろそっちに近いんじゃないかなあ。
  • 「永遠なる君は血の真紅」市川憂人(Anonymous Bookstore
    • 不老不死となる吸血鬼の血をめぐる物語。ルビを多用した文体はしかし、イメージ喚起の役には立っていない気がする。廃都市の状況が伝わってこないのだ。3年たっても水銀の沼から蒸気が立ち昇り続けているような土地に生物(大鴉)が住めるものだろうか? 200枚書けばいいプロットだという気もする。
  • 「冷たい土」高橋百三
    • もうちょっと枚数使ってよい内容。冒頭、土砂降りの中で庭のぬかるみと戯れる描写があるんですがいきなり土だけに意識がいっていて不自然な気もする。全身を叩く雨粒と裸足の指の間で感ずる泥の感触、両方あってもよい気が。描くべきポイントの提示に緩急つけてみたほうが効果的かも。
  • 「虫の箱」鈴木知友(id:mhk
    • 会話の一部が不自然。直し忘れである。冒頭の虫に関する薀蓄がもっと効果的に生きるような展開にすればいいのに。本筋に入るまでが長すぎるのと、到達点までの道筋が平板かつ直線的すぎる。もうちょっと捻りを加えるべき。
  • 「ミッシング・アンダー・ザ・サン」小田牧央(*the long fish*
    • 緻密に作り上げたプロットを枚数制限から最後でぶった切った、というのがひどくわかりやすい。そもそも50枚で書く物語ではない。たぶん創作の方法論が自分とは対極にあって、自分にはこういうのが書けないこともわかる。
  • 「ギターなんて誰でも弾ける」いづる(id:iduru
    • ちんこが生えた少女とギターの話。自分だったらもうちょっと残酷だったり嫌な展開にしてしまいそうなんだけど、毎回そうはならない。性格のちがいかな。プロットと枚数は過不足なくてちょうどよいと思う。
  • 「どるみぃ」三澤未来(Fortune
    • さらっと終わってしまった。最後の一文に至る状況説明で終わってしまっているので、作品としての雰囲気作り、読者の心理誘導に心を砕くべきかも。PCに関する説明文章はもうちょっと上手く処理できそう。
  • 「廃棄された者の幸せ」踝祐吾(Quantum Educational Device
    • 「ゴミの街」に生きるギャングの物語。とにかくチープでどこまで本気で書いてるのかわからない。「ブラックギャング」「まっすぐに拳を打ち砕け。」「こんな場に天国など無い。なら地獄の王になってやろう。ヘルアンドヘブン。」(無いんじゃないのか?)などなどの頭悪いフレーズに心をわしづかみにされる。ギャングのボスが『キャプテン』なのも素晴らしすぎる。
  • 「リテイク」近田鳶迩(id:enji
    • 某作品とネタがかぶってるのは偶然だそうだ。かなり卒が無くて、あまりいうことがない。
  • 「飲酒少年院」キセン(id:firstheaven
    • 毎回毎回年齢に見合わない上手さだと思う。自分はこういう作品書こうという発想自体がそもそもないので、新鮮に読んだ。ラスト近くはちょっと書き急ぎすぎかもしれない。そして、その状況に至る主人公の心理描写、そして心理的伏線は必要だと思う。終盤近くの(たぶん)脱字も痛いかも。