我孫子武丸『弥勒の掌』

mhk2005-04-26

ISBN:4163238107
おもしろーい! あっという間に読みました。
教え子との浮気が原因で夫婦仲が冷え切った高校教師。その妻が失踪した。ヤクザとの癒着嫌疑をかけられたベテラン刑事。その妻が殺された。その影に新興宗教《救いの御手》の影をみたふたりはコンビを組み、宗教本部に潜入捜査をはじめるのだが……。
カットバックによる進行、刑事サイドと新興宗教に潜入する男、という道具立てが、貫井徳郎『慟哭』をほうふつとさせますが、こっちは慟哭しないな。むしろ大爆笑小説。
遅筆化が進行した、綾辻、麻耶、法月あたりから一周遅れて、なんと13年ぶりの書き下ろし長編(ちなみに『殺戮にいたる病』以来)。最後発にしていちばんシンプル。300ページ弱の短め長編でありました。しかし、悪くない! これは面白いです。無駄なものがまるでない物語構成には感心せざるを得ません。我孫子武丸は上手いですね。
ミステリとしてのありかたとしては殊能将之作品に近いものがあるような気がします。謎解きのシーンが爆笑必至のあたりとか。いやあ、こんなあほらしいことよく考えるなあ。(あくまで個人的な感覚)