小川勝己『狗』

mhk2005-03-29

ISBN:4152085789
じつは読んでなかった、はははは!
現代悪女列伝というよりは現代DQN女列伝。
リーダビリティが高いので本当に一瞬で読めたけれど、読めすぎちゃう気もする。つまり、DQN女が酷いことをしでかす、という括りのせいで、先の展開がかなり読めやすくなってしまっているのだ。「蝋燭遊戯」、「老人と膿」、「代償」の3篇は、30枚程度ということもあってか、実質小噺になってしまっていると思う。まあ、なんというのか、いろいろ呆れた。『まどろむベイビーキッス』と同じキャバクラを舞台にしたサイコ・キャバ嬢ストーリー「You裡」はストレートに怖い。普通のバンド話がえんえんと続いて、どうなることか逆に不安にさせた「夢の報酬」には、小川勝己の音楽趣味がストレートに反映されているのかしらん。小川勝己の作品タイトルが、DEADENDのヴォーカルMORRIEのソロアルバム収録曲名から取られているというのはわりと有名だと思うけれど(ふと気づいて確認したら、現代作家ガイドでは書き忘れていた。まあ、いいや)、この「夢の報酬」の主人公はなんとなく高校を中退して引きこもりからギター少年にジョブチェンジした若者なのに、音楽の趣味がやけに古いのが気になる。メンバーの言動からジャニス・ジョップリンを連想する二十そこそこの人間もなかなかいないだろう。
面白いけど、やっぱり小川勝己はある程度長いもの書いたほうがよいな。横溝とエルロイのあいだで揺れ動く感じの長編を出して欲しいんだけど(それはどんなだ)。