レオ・ペルッツ(訳:垂野創一郎)『最後の審判の巨匠』

mhk2005-03-27

ISBN:4794927452
1909年のウィーン。俳優オイゲン・ビショーフの家で友人たちが演奏に興じていた。つぎの舞台劇で演ずる新しい役柄を披露することになったビショーフは、役作りと称して庭の四阿にこもった。鳴り響いた銃声に駆けつけた一同が目にしたのは、瀕死となって横たわるビショーフの姿だった。現場は密室状態であり、発作的な自殺だと思われたが、技師ゾルグループは「これは自殺ではない」と指摘する。ビショーフの最期の言葉「最後の審判」とは何を意味するのか? また、巷で頻発している奇妙な自殺とこの事件との関連は?
リアリティを完全に放棄して、主題に沿った形に物語を捻じ曲げる手法は、たとえば麻耶雄嵩作品を連想しますが、こちらが着地するのは本格ではない場所。「喇叭(トランペット)赤」なる妖しくも蠱惑的な造語が乱れ飛ぶ幻想文体に導かれて、「ぶーわわわわ、だめだこりゃ」な地平に至る。ヘンテコな小説であります。
巻末「ペルッツ問答」(34ページの大ボリューム!)に、英米ミステリでは考えられないことですとかさりげなく書いてあって笑う。