チャック・パラニューク(訳:池田真紀子)『ララバイ』

mhk2005-03-25

ISBN:4152086238
乳幼児ぽっくり病の取材を進める新聞記者のストリーターが行き着いたのは『世界の詩と歌』という本。これに収録されたアフリカ起源の子守唄に聴いた者を瞬殺する能力が秘められていたのだ。もし、この曲がテレビやラジオで流れたら? 幽霊屋敷専門の不動産業者ヘレン、その秘書にして魔女崇拝者のモナ、モナの彼氏である環境テロリストオイスターとともに全米中の『世界の詩と歌』を処分する旅に出たストリーターだったが……。
面白かったです。
DEATH NOTE』とネタがかぶってるかも、と思ったんですが、神に近づくことに迷いのないライトと比べて、混乱しまくってるストリーターはパラニュークらしい。てっきり20代前半くらいなのかと思ったら、思いっきり中年男性でそれも驚き。(一人称が「ぼく」だからなあ)
物語の鍵を握るのは「間引きの歌」なる超自然能力。まるでジョナサン・キャロル作品のプロットをチャック・パラニュークが小説化したよう。パラニューク節によるダーク・ファンタジイです。好きな作家(海外)がこんなだけに、たいへん好みなのかといえば、うーん。そうはならない。むつかしいものです。舞城王太郎阿修羅ガール』を読んだときの感覚とさも似たりで、嫌いかといわれれば、好きと答えるけれど、どこか違和感があります。
そういえば、いつも2、3人で回してる物語の主要登場人物を今回4人まで増やしたせいか、オイスターの人物的な掘り下げがちょっと足りない気もしますね。尺が短いからかな。そのせいかロード・ノヴェルっぽくもないです。
解説でも触れられている、パラニューク父惨殺事件が作品に影を落として、いつもの調子じゃなくなるかも、とちょっと不安でしたが、その点は杞憂でした。いまだ『サバイバー』がベストですが、『ファイト・クラブ』と同列かちょい下くらいにはよいかも。
常盤響の装丁はとてもいいですね。