米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』

米澤穂信『春期限定いちごタルト事件』

ISBN:4488451012
高校入学を期に、清く正しい小市民をめざそうと頑張る小鳩君と小佐内さんのお話。いちおう連作短編の形式はとっているものの、中の1話だけとりだしても何の意味もない、最終話「孤狼の心」とそれに続くエピローグ展開がすべて。
計算してやってるとはあまり思えないんですが、なんかぶきっちょな気がして、このオチに誘導するにしても、もうちょっと何か上手いことできんもんかとやたらもどかしい。米澤穂信の作品読むたび思います。
日常系ミステリで後味をよくするのは実はけっこう難しい。密室殺人とか首なし死体とか出して、物語を完全非日常化したほうが読者は気が楽だったりするわけです。この作品の場合、事件をひどくばくぜんとしたものにしたり、問題として成立するか否かぎりぎりのものにすることで、なんとかさせております。しかし、あの描き方では勝部先輩がいちばんの悪役みたいで、けっこうひどいような気が。「For your eyes only」の答えって一目瞭然だと思うんですが、ちがいますか。
新天地を求めて創元にやってきた作家の作品に対してライトノベル読者向けの解説をつけるというのは、戦略的に意味がわからんなー。