ハウルの動く城

ハウルの動く城

戦争反対!! と口先だけ唱えてみる願望充足的ホストアニメ。
父親の遺した帽子店を切り盛りしているソフィーが路地でキムタクに出会って空中散歩。その後、嫉妬に狂った三輪明宏に老婆になる呪いをかけられてしまう。引っ込み思案で流されるまま毎日を送っていたソフィーは90歳の婆さんになったとたん、怖いもの知らずになって魔法使いキムタクの動く城に転がり込んだりする。戦時下で国家から召集のかかったキムタクはイヤイヤする。そんなお話。
動く城のビジュアルは圧巻だし、宮崎アニメらしく、ちびっ子はばたばた駆け回って、もののけも蠢いて、少女は空飛んで、と心躍るシーンは多いんですが、なんじゃな、この脚本は……。ソフィー、ハウルの主役ふたりの行動原理がさっぱりな上に、何度も何度も、くどいばかりに強調される戦争の悲惨さもただ口にしてるだけにすぎません。こんな戦争で犠牲になった人間はまったくうかばれない。荒地の魔女@三輪明宏の怪演、ちびっ子弟子マルクル、炎の悪魔カルシファーはたいへん素晴らしいんですが、うーむ。
声優としてのキムタクはそれほど悪くない。それよりは18歳のソフィーと90歳のソフィーをともに倍賞千恵子に演じさせるキャスティングのほうが問題でしょう。いやあ、18とは思いませんでした。外見あんまり変わらないままに三十路越えてしまった中年女じゃなかったんだ!
〆は脱力の極みなので、あの階段昇りきったところで ―― 完 ―― でもよかったですね。パンフレットに文章寄せている皆さん、このラストに対して一様に口を濁しているのが印象的であります。以下、結末を具体的にばらさない範囲で引用。
クミコ(歌手)

キツネにつままれたようにボーゼンと座る私は

富士眞奈美(女優)

そういう意味ではこのお話はシュールレアリズムですよね。

佐藤さとる(児童文学作家)

だからといって、こういう約束事のすべてを、観客に説明する必要はなく、自然に伝わるだけでいいと思う。このあたりは、多分ファンタジー童話と同じだろう。

宮崎駿がこんな物語を撮ってしまうんだから、『世界の中心で、愛をさけぶ』も『Deep Love』もベストセラーになるってものです。

(追記):すみません、上で目茶目茶けなしてますが、前売り買って1300円で観るぶんにはおススメします。中盤まではわくわくするシーン多いし。階段の爆笑だけで1000円くらいには値する。ただ、1800円となると、うーむ……。