「思い出せない」

でかい建物の中にいる。
そこは図書館とファーストフードとCD屋とパソコンショップがいっしょになったようなもので、自分はその中で歴史のテスト勉強をしている。
一生懸命やっているとはいっても、試験範囲まるまる何もおぼえていないという体たらくで、ここで多少がんばったとしても一夜漬けのとなりくらいのレベルに終わることはまちがいない。
しかしやるしかないので、しかたなくテキストのページを広げる。
ノートに要点を書き出したりしながらしばらく勉強を続けるうちに、「やればできるんじゃん!」などと根拠のない自信が湧いて出て、あっさりと勉強を中断してしまう。
新しく出た雑誌を物色すべく書架まで足を運ぶ途中でバカ正直に勉強している坂本の姿を発見して、遠くから嘲笑う。
しかし最終的に自分が坂本に成績で負けることはまちがいなく、しかもそれは下のほうの低レベルな争いであることもまたまちがいないため、暗澹たる気分になる。
自分をこんな気持ちにさせた坂本に遠くから呪いをかける。
書架についた。
とりあえずパソコン・ネット関係の雑誌を物色してるうち、文芸誌の新刊本が入っていることに気づく。
そこには米田淳一という人が日本文学史について完全徹底紹介するという8ページコラムの連載第2回が掲載されていて(全6回予定)、その内容のあまりのおおざっぱぶりにひっくり返りそうになる。
投げ捨てるように読んでいた文芸誌を書架に戻すと、今度はファーストフードに向かった。
そこはスターバックスというよりはマクドナルド、ロッテリアあたりで、安っぽく、雑然とした雰囲気だった。
空いている席に座ってシェークみたいなものを飲みはじめる。
いつのまにか隣には女の子が2人座っている。誰なんだろう。
ひとりの男が近づいてくる。
かせきさいだあとレオパルドン中原昌也キリンジのどっちかを足して割ったりした見た目のその男は、一部で有名なテクノミュージシャンらしかった。
ぜんぜん知らなかったけれど、隣に座ってる女の子にこっそり教えてもらった。
「いやあ、こないだ出た新譜はよかったですよ」
とか、適当なことを話しつつ、冷や汗をかく。こいつ、どこか行かないかな。
「じゃ、これを」
男は名刺らしきものをこちらに差し出す、が、名詞サイズだと感じたのは男の手元にあるときだけで、実はA4サイズの紙(しかも2枚組)だった。
対処にたいへん困り、とりあえず壁に貼ると、となりの女の子2人もまったく同じことをしていて、「あ、正解だった」と安心する半面、「なんか凡庸なことしちゃったな」と軽く落ち込む。
一見名刺に思えたそれは実はイベントのフライヤーで、それにしてもA4サイズは大きいような気がした。
勝手に貼って店の人間に怒られないだろうか? とも思う。
フライヤーに書かれているイベントの開催日時を見て驚く。これは今日だ。
「大丈夫なんですか」と聞くと、「いや、だいたい6人くらい来ると思うよ」と力ない返事が返ってくる。
だからといって、自分が行く気はしない。
男は向こうの席に行ってしまった。
彼がどんな曲をやってるのか、女の子に聞くと、「えーと、あれ、昔、ずいぶん昔、似たようなのが」と言う。
バンド名が思い出せないようだ。
「えーと、毎日が誕生日とか、どうとか」
自分の頭の中にもの曲のイメージが急激に雪崩れ込んでくる。
えーと、あのバンドっぽい。あのバンドってどのバンドだろう?
「ときめき☆ミッドナイト」
「ちがう」
「グッパイ・サマーデイズ
「それでもない」
「強運♥インベーダーズ」
「うーん」
「きらめき、きらめき、ゆらめき、ゆらめき……」
いつまでたっても思い出せない。
※ めずらしく夢を忠実に再現してみました。長くなりすぎるし、わけわかんないのでいつもは編集してしまいます。現実の知り合いや作家さんが登場するのは夢を見るのはめずらしく、もっと抽象的なものが多いですね。正解は「すきすきスイッチ」でした。