「冷凍マグロ」

歩いていると道を聞かれた。
「ここらへんは不慣れなので、ちょっとわかりませんね」
と答えると、
「では、これを」と冷凍マグロを渡された。
それは人間の胴体よりもっと大きくて、氷よりももっと冷たい。
こんなものもらってもしかたないし、とにかく重いのでどこか電柱の下にでもほっぽいて帰ろうかと思ったけれど、さっきの人が視界の片隅に入るので、さすがに捨てられない。
なんとかまこうとしているうちに、こんどは自分が迷ってしまった。